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過剰な注目を集める香川真司
 前回のコラムでは、香川真司の欧州におけるその本質的な知名度について書いた。香川の肉声を英語にすると、それこそあっと言う間に英メディアが群がり、日本代表MFのコメントを先を争って伝える。さらには、香川のコメントの中に現在のマンチェスター・ユナイテッドで「思うように試合に出られていない」というニュアンスを感じると、移籍報道まで飛躍させてしまう。

 しかしそれもユナイテッドというビッグクラブでプレーする超一流選手の宿命だ。ネームバリューのある選手、すなわち、欧州メディアに実力を認められた選手達は、どうしても過剰なまでにマスコミの注目を集めてしまう。

 自分が書いたものなので、コラムに対するツイートも読んでみた。大部分の書き込みが「面白かった」というもので、書き手としてもうれしかった。しかしその一方で、「香川が毎試合見たい」「活躍できるビッグクラブに移ってほしい」「どうすればユナイテッドで試合に出られるようになるのか」という意見も多かった。

“どうすればユナイテッドで試合に出られるようになるのか”という話は、僕個人、非常に本質的な問題があると思っている。それは香川選手だけに当てはまる問題ではなく、これまで、日本人選手がプレミアで今ひとつ期待以上の活躍ができていないという事実に対するひとつの回答にもなる話だ。

 一言で言ってしまうと、日本における『サッカー』とイングランドにおける『フットボール』の違いなのだが、この話題は来週、FA創立150周年の話もからめて書いてみたい。そこで今回は、香川選手が一部のファンに望まれているように、毎試合出られるようなビッグクラブへの移籍があるのか、その可能性について探ってみたい。

理由【1】非常に疑わしい情報源、理由【2】マンUというクラブ
 今週月曜日(11月4日)にも、日本で香川の移籍報道が出た。元ネタになっているのは『サンデー・ピープル』という日曜紙の記事だった。その中身を読むと、「来年のW杯を目前にして、香川は試合勘が鈍ることを嫌い“移籍を考えている”とチームメイトに伝えた」という内容だった。

 まず、疑わしいのは、サンデー・ピープルという新聞そのものだ。英国では新聞の女性読者も多く、日曜紙はそういった女性も対象にして、週刊誌的なコンセプトで作られているものも多い。その中でもピープルは、芸能人のゴシップを中心にした「女性週刊誌的」な新聞だ。

 ちなみにこの香川の移籍記事が出た11月3日付の一面は、英人気テレビのダンスオーディション番組に出ている女優が、他の出演者に「ダンスがうまくない」と、いじめにあっているという話だった。サッカーに関する記事もかなり怪しく、井戸端会議のネタとしてならいいが、個人的にこの新聞の情報は全く信用していない。

 またこの記事では、「チームメイト」が香川移籍のニュースソースになっているが、これは現場で取材をしている限り、まずありえないと言える。ユナイテッドというクラブは、所属選手に対し、非常に厳しい取材規制をしている。そのひとつに、他の選手についての言及の規制がある。

 例えば、新スポンサー発表会見などで、香川と話す機会が与えられる際、質問は事前にチェックされ、他のユナイテッド所属選手に関して香川の意見を求めるような質問は、大抵の場合削られる。そんな管理を受けているユナイテッドの選手が、香川の移籍について「本人がそういっていた」とどこかの記者に漏らすなど、ちょっと考えられない。

 また、『メトロ』という新聞が香川の移籍を伝えているという記事もあったが、メトロは主に地下鉄構内で無料配布される新聞で、掲載されている記事を読んでも独自の取材をしているという雰囲気はあまりない。どこかにいるのかも知れないが、実際にこれまで、スタジアムで「メトロの記者だ」という人に出会ったこともない。

今季初めに「干された」理由
 まあ、移籍という話題は、噂するにはこれ以上面白いことはないし、新聞にとっては読者の関心も集められる。もちろん、英国にいる日本人記者としては、「香川」という名前が出た以上、媒体の信用性に関わらず、日本にリアクションを送らなければならない事情もあるだろう。だからどうしても、「英国のなになにという媒体によると」という形で、細々とした香川の移籍記事が日本で報じられてしまうのだ。

 それでは本当のところはどうなのか。英国で「Anything can happen in football」(フットボールではなんでも起こりうる)という表現がある。

 これは「サッカーにおいてはどんな夢でも叶う」というポジティブなニュアンスもあるが、「サッカー界では何が起こるか分からない」という意味もあり、移籍に関して訊かれた選手、監督がよく口にする表現でもある。もちろん、香川が絶対にユナイテッドを離脱しないとは断言できない。しかし現時点で、香川移籍の兆候はないと見ている。

 移籍には、マーケット上におけるその選手の需要と供給の度合いという、ビジネス的な側面も大きい。その点、元恩師のクロップ監督やボルフスブルクのクラウス・アロフスSDからすでにラブコールがあるように、香川が獲得可能なら、欲しいというクラブは少なくないだろう。

 しかも今の段階で欲しいと言うだけならタダである。しかし本来移籍の絶対条件は、本人が出たいか、監督が「不要」とするか、この2つだろう。僕は今のところ現場にその気配はないと感じる。

 確かに今季開幕当初、香川は「干された」と言っても過言ではないほど、試合に出られなかった。しかしその理由ははっきりしている。コンフェデ杯出場というハンディがあったことだ。

 今季、新監督が就任して、昨季からのつながりがなくなり、ブラジルで行われたコンフェデ杯に出場して今季出遅れた選手は香川だけではない。ユナイテッドの同僚ではメキシコ代表FWエルナンデスがそうだし、チェルシーではモウリーニョ監督が復帰し、昨季のチーム得点王だったマタが、ブラジルで決勝まで戦っておかげで今季試合に出られなくなった。

ソシエダ戦ではルーニーとの「夢」のコンビも
 新監督というのはナーバスなもので、何もかもまず自分の目で確認しなくては“何事も決めたくない”と思うものだろう。とくにサー・アレックス・ファーガソン監督という偉大な前任者の後任となったモイーズ監督の場合、その気持ちはなおさらでないか。当然、プレシーズンに遅れて参加した選手をすぐさま使う勇気はない。

 しかしその状況は最近、少しずつ、ゆっくりではあるが、確実に好転している。このところ香川は、欧州CL戦を中心に先発起用されはじめ、モイーズに注意深く試されはじめた。この辺りの、モイーズ監督の気質、プレースタイルの好み、香川の起用方針については、“サッカーとフットボールの違い”というテーマとともに、来週のコラムで明らかにしたいが、日本代表MFに対するスコットランド人指揮官の扱いは変わった。

 きっかけは10月23日にホームで行われたレアル・ソシエダとのCL戦だった。この試合で香川は今季初のフル出場を記録。モイーズ監督は左サイドで先発させたが、その出来が良く、試合終了間際の10分間はトップ下でルーニーとコンビを組ませ、イングランド代表FWとの連携を好む香川にとっては「夢」とも言えるシステムでプレーさせた。

この時間帯で香川はさらに切れ味鋭い動きを見せ、モイーズ監督に、とくにルーニーとの縦の連携でその才能の片鱗を見せつけた。

 すると試合後の会見でモイーズ監督は、「誰もがいい選手だと言ってきたが、初めて本当のシンジを見たと思う」と語り、今季の公式戦終了直後の会見で初めて香川を褒めるとともに、それまで日本のナンバー10を使わなかった本音を漏らした。

それは、自分が設定したフィットネスレベルに達したと己の目で見極めるまで、どんなに前評判が高くても、前監督が素晴らしいといっても、その選手を使うことはないという方針だ。

 モイーズ監督のこの香川に対する評価は、次戦のストーク戦連続先発というはっきり目に見える形で表れた。

理由【3】モイーズ監督の評価が変化
 これまでのパターンなら、スペースがあり香川がプレーしやすいCL戦で起用し、その直後のプレミア戦では他の選手を使っただろう。ソシエダ戦ではフル出場。それに加え、チームのローテーション制もある。他の有力選手にもなるべく出場機会を与え、欲求不満をためさせない配慮もしたい。

 さらにこの試合は、今季からマーク・ヒューズ監督になって多少そのスタイルに変化が見えるとはいっても、フィジカルなプレミアの中でもとくに肉弾戦が得意なストークが相手だった。正直言って、香川が先発するとは思っていなかった。

 ところがモイーズ監督はそんな僕の思惑を見事に裏切ってくれた。これは“香川を使いたい”というスコットランド人指揮官の欲求が素直に出た起用だと見ていいだろう。残念ながらこの試合で香川は、思うような見せ場は作れなかった。

 が、1-0、2-1と相手に2度先攻されて最後に3-2とひっくり返した試合、最後までピッチに立っていたことは大きい。しかも2試合連続フル出場はユナイテッド移籍以来、初めてだった。

 その次のフラム戦ではヤヌザイに左サイドの先発を譲ったが、後半の頭からサブ出場し、またも勝ち試合の最後にピッチに立っていた。さらに今週火曜日のCL戦では再び存在感を示すプレーを見せ、フル出場を果たした。

 まだまだ物足りないというファンも多いかも知れないが、こうした最近の出場パターンを見て、モイーズ監督の香川起用状況が好転していないというのは不自然である。

 そして肝心である香川の気持ちだ。それは、10月23日のソシエダ戦試合終了後、久しぶりにいいプレーをした香川を、選手と記者とが接触できるミックスゾーンで日本人記者団が10数人取り囲んでいた時のことだった。

理由【4】チームメイトとの良好な関係
 まず微笑みを浮かべたイングランド代表MFのアシュレー・ヤングが香川に近づき、その頭を素知らぬ顔で小突いていった。すると今度はルーニー。

 最後の10分間、香川と2トップでコンビを組んだワンダーボーイは、真剣な表情で記者団に囲まれた日本代表MF見つけると、いたずらっ子のような顔になって、その背中に体当たり。「なんだ!」という顔で振り向いた香川にあどけない笑顔を見せて、早足で通路を去っていった。

 そのルーニーの表情は、「おい、今日のプレーは良かったぞ。またその調子で頼む」とでも言いたげな、本当に親しみのこもったものだった。香川がユナイテッドの大黒柱に、チームメイトとしてしっかり受け入れられているのが分かる場面だった。

 こうしたルーニーの態度は、試合だけではなく、普段の練習を通して、香川がそれなりの存在感を示している証拠だろう。そうでなければ、あのやんちゃで勝ち気なワンダーボーイが、あんなに無邪気に香川に接するわけがない。

 こういうシーンに出会うと、「香川がユナイテッドでハッピーではない」「移籍を考えている」という推測には行き着かない。むしろ、どうにかしてユナイテッドのレギュラーになろうと、普段の練習からチームメイトをしびれさせるような動きを見せていると考えるのが妥当ではないか。それだからこそ、この夜、ヤングやルーニーが「良かったな」と祝福するように、いいプレーをした香川を茶化していったのだろう。

理由【5】大物選手を獲得出来ない状況
 もちろん、毎試合見たいという香川ファンの気持ちは痛いほど分かる。僕に限らず、取材に訪れる日本人記者団はみな同じだが、そうしたファンと同様、チームシートに香川の名前がなければ非常にがっかりする。

 たぶん、香川はそういう日本の大きな期待を分かっているのだろう。だからどんなにいいプレーをしても、ゴールという結果に結びつかなければ、絶対に自分に及第点を与えない。「もっともっと」という言葉を呪文のように唱える。

 無論それでも、1月1日の移籍解禁で、モイーズ監督がセスク・ファブレガスやアスレティック・ビルバオのMFアンデル・エレーラを獲得した場合、状況が悪化する可能性はある。

 ただし、本来大物移籍はなく、不足を補うという補強が多い1月に、この2人を獲得できるのかどうかは大いに疑問。今夏に失敗した時点で、獲得はかなり厳しくなっているのではないか。しかも移籍金はセスクが4000万ポンド(約64億円)、エレーラが3500万ポンド(約56億円)と言われ、非常に高額である。

 まあ、冒頭紹介した表現を使えば、セスクやエレーラの獲得話は現在のところ“Anything can happen in football”の範疇。不確実な噂の段階にすぎない。

 1月のことはともかく、僕は現在の香川に「移籍」という迷いはないと見る。チームのプレースタイルとの共存、ポジション問題と、日本のナンバー10に不利な状況は確かにある。が、今の香川はその苦難を持ち前の負けん気とスキルで乗り越え、ただひたすらゴールという結果を追い求めながら、ユナイテッドの中核になることを目指しているのだ。

text by 森昌利

香川ちゃんはマンUで頑張って欲しい!!!
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